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職場環境劣悪だったITベンチャー、なぜ離職率激減?再入社可、副業自由、社長も育休…

 青野慶久氏がサイボウズの社長に就任した2005年の直後、同社社員の離職率は28%に急上昇した。危機感を覚えた青野氏が人事制度の見直しを図った結果、離職率は毎年下がり続け、10年には5%に低下、この3年間は5%弱で推移している。

 なにが、サイボウズの離職率を下げる原動力になったのだろうか。去る6月25日、PwCあらた監査法人が都内で開いたセミナーで、青野氏は実情を明かした。

 青野氏は、自らを「ITベンチャーを立ち上げたぐらいなので、ワーカホリックの類いの人間です。職場で死ねたら本望という感じで、夜も布団の中でパソコンの画面を見ながらまぶたが落ちる瞬間が、私にとってはエクスタシー」と自嘲気味に語る。

 1997年の創業以降、同社の年間離職率は15~20%で推移してきた。この水準は、ITベンチャーでは決して珍しくない。

「ITベンチャーの平均離職率は20%ぐらいなので、『こんなもんだろう』と、さほど気にしていませんでした。“弱肉強食のITベンチャーで、残業しないで帰るのはあり得ないよね”とも思っていました」(青野氏)

 社員が終電で帰宅するのも、会議室に寝泊まりするのも、休日出勤するのも、ごく当たり前の光景だった。青野氏は、こうした就労環境を「特に悪いと思っていませんでした」と語るが、社長に就任した05年に異常事態が発生する。前述の通り、離職率が28%に跳ね上がったのだ。

 離職者が発生すれば、代わりに人材を補充しなければならないが、採用にはコストも時間もかかる上、採用後も教育コストが発生する。「離職率を下げたほうが、経済合理性に合致するのではないか」という問題意識が、青野氏が離職率改善に取り組むきっかけになった。

 そこで、青野氏はいくつかの手を打つ。退職を申し出た社員に対して「給料が不満なら、上げてあげる」「仕事が不満なら、別の仕事に変えてあげるよ」などと説得を試みた。しかし、効果はなく、いくら引き留めても社員はどんどん辞めていった。

●青野氏を変えた、ある社員の変貌

 なぜ、人は辞めるのか。青野氏が真剣に考え始めた時、ある男性社員がこう話した。

「青野さん。私、そろそろサイボウズを辞めようと思います」

 青野氏は昇給などを提案しようとしたが、あえて口にしなかった。引き留め工作は「自分を騙しながらやっているようで、気分が悪かった」ので、あえて開き直ったのだ。よく考えると、サイボウズの職場環境は劣悪で、退職者が続くのも仕方ない。そう思った青野氏は、以下のように返した。

「君が辞めるのも、仕方ないよな。毎日楽しく働けていないようだから、ここで辞めるのは良い決断だよな」

 すると、男性社員からは以下のような反応があった。

「ほかの社員は引き留めたのに、どうして私を引き留めないんですか?」

「なんで引き留めないといけないんだ? 君の人生を考えているから引き留めないのだ」

 その日のやりとりはこれで終わったが、翌日、その社員は再び青野氏の元を訪れてこう言った。

「私は別にサイボウズを辞めたいわけではなく、この部署の問題が解決されないから、すごくストレスを感じていて、だから『辞めたい』と言ったのです」

 彼には彼なりの夢があり、そのために「部署をこうしたい」という希望があったが、それが無理だとわかり、心が折れて辞めると言いだしたのだ。それに気づいた青野氏は、「その問題を一緒に解決しようじゃないか」と申し出て、その場を収めた。

 これを機に、その社員は人が変わったように働くようになり、翌年には全社員の投票で決定するMVPにも輝いた。給料を上げず、担当業務も変えていないのに、人はこれだけモチベーションを高めることができるのか。青野氏はこの変貌に衝撃を受け、ひとつの答えにたどり着いた。

「モチベーションは、人によって違うということです。私のモチベーションはまぶたが落ちるまで働くことでずが、こういう人は少ないでしょう。『自分は仕事と生活のバランスを考えたい』『子供が生まれたので、家庭を中心にしたい』という人もいれば、『こんな仕事をして、お客様に喜ばれたい』『こんな技術を極めたい』という人もいるはずです。一人ひとりの夢が違うのに、ひとつに統合しようとすると、疲弊が生まれてしまうのかなと思います」(同)

●異例の人事制度を導入

 青野氏は、考え方を転換した。辞める社員を引き留めるのではなく、残った社員の夢をかなえられる会社にしようと方針を定め、人事制度を見直した。新たな人事制度の方針は「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」というものだ。

 例えば、「今の人事制度では楽しく働けない」と思う社員には、「では、あなた用の人事制度を作りましょう」と提案する。青野氏は、「人事制度は変えるものではなく、足すものである」という発想に立った。

 異なる夢を持つ人たちを同じ評価軸で計るのは不自然で、一人ひとりが楽しければいいと考えた。つまり、公平性より個性の重視を優先させたのである。

 その柱になったのが、選択型人事制度である。労働時間と働く場所を軸に「会社で長時間働く」「会社以外の自由な場所で長時間働く」「会社で短時間働く」「自宅で長時間働く」「自由な場所で短時間働く」など、9パターンのワークスタイルを用意して、各自がライフスタイルに合わせて選択できるようにした。

 各パターンの給与には格差を設け、家庭の事情によるライフスタイルの変化も想定して、選択するパターンは定期的に見直されている。

 同社の社員は、現在約500人だ。勤務の時間と場所がバラバラで、社員間のコミュニケーションに支障は生じないのだろうか? 青野氏は「会社に来なくても、みんな仕事はしているわけで、グループウェアを使って常に話し合っています。また、各社員がツール上にどんどん情報をアップすることで、今まで知らなかったことも知ることができるようになります」と語る。

 選択型人事制度を導入した結果、離職率は下がり始め、前述したように、この3年は5%弱で推移している。しかし、青野氏の中に新たな不安が湧いてきた。

「これだけ社員が辞めないのは、サイボウズが生ぬるい会社だからではないか。あるいは、人の入れ替わりはある程度あったほうが自然なのに、辞めたい社員を無理に引き留めていないか」というものだ。

●再入社OK、副業も自由化

 働きやすい会社になると、新卒入社のプロパー社員が辞めなくなるのが通例だが、同社のプロパー社員は青野氏にこう語ったことがあるという。

「青野さん、私はサイボウズしか知らないので、ほかの会社も見てみたいです」

「いい心がけだね。じゃ、辞めてちょっと見てきたら?」

「いえ、辞めたくはないんです。サイボウズが大好きなんです」

「ややこしいな、君は……」

 このやりとりから、青野氏は「今度は離職率をあえて上げていく制度」を創設した。35歳以下のエンジニアやスタッフを対象に、転職や留学など自分を成長させるための「育自分休暇制度」を設け、利用者には退職後6年間は復帰可能な「再入社パスポート」が交付される。

 一度辞めても、再入社できるようにすればいいというわけで、すでに5~6人に適用され、青年海外協力隊に応募してアフリカ在住の女性社員もいる。

 さらに「副業の自由化」として、会社に断らずに副業を可能とした。青野氏は当初、サイボウズに入社した以上はサイボウズの仕事に専念すべきだと考えていたが、「ヤフオク!」で物を売り買いして稼ぐのは副業に該当するのか、ブログを書いてアフィリエイト広告で稼ぐのは副業に該当するのかなど、「考えたらきりがないので、全面解禁しました」と語る。

 副業を自由化すると、技術書を執筆するエンジニア、サイボウズで週3日働き、ほかの日は他社で働く社員、NPO活動に参画する社員などが出てきたが、情報漏えいなどの問題は発生していない。むしろ、副業で得た人脈からさまざまな話が持ち込まれるなど、メリットが生まれるようになったという。

 こうした制度が整備されても、それらが趣旨通りに運用されるかどうかは、組織風土が関わってくる。同社は社員に、問題だと思ったことは自分から提起する「自立と議論の文化」を周知徹底させている。

 例えば、「働くお母さん社員ばかりが優先されていて、不公平な感じがします。私は毎日、15時に帰る人の仕事をフォローしています」と酒の席でこぼす社員に対して、青野氏はこう諭している。

「じゃあ、あなたはどんな制度が欲しいのですか? ほかの社員の分まで働くことを支援してほしいのなら、言ってください。必ずテーブルに上げて議論の過程をオープンにして、可能であれば制度に盛り込みます。酒場で愚痴るのは卑怯です」

●社長自ら2週間の育休を取得

 その成果として、営業マンからこんな提案が上がった。

「出張先で、移動の合間にスターバックスコーヒーで仕事をするので、コーヒー代を出していただけますか?」

 青野氏は「コーヒーはお前が飲むんだから、自分で払えよ」と思ったが、「空き時間までがんばって働く姿勢は良い」と考え直し、コーヒー代の補助制度を設けた。

「欲しいと思う人事制度は提案する会社なので、サイボウズの社員は大変です。酒場で愚痴を言ったら、ほかの社員から詰められます」(同)

 しかし、制度化されても、社員が新たな行動を取るには勇気が必要だ。そこで不可欠なのがリーダーの率先垂範で、青野氏は2010年に2週間の育児休暇を取得した。

「東京証券取引所第一部上場企業の社長が育休を取った」として話題になったが、社内では、男性社員の育休取得に引け目がなくなったという。

 青野氏は4カ月前に3人目の子供が生まれたため、現在は保育園に通う上の子供のお迎えのために毎日16時に退社している。「お先に失礼します!」と社を後にする青野氏を見て、社員は「この会社では、子育てで早く帰るのはありなんだ」とあらためて認識するようになり、それまで申し訳なさそうに退社していた社員も、堂々と退社できるようになったという。

 サイボウズの取り組みは「働き方の公明正大化」である。工場や店舗など現場を運営する職場では、ここまでの自由化は難しいかもしれないが、制約条件を並べる前に、柔軟に可能性を追求したほうが合理的だ。企業価値は、株主にとっては株式の時価総額だが、その礎となるのが、社員にとっての“在籍価値”である。
(文=編集部)

ビジネスジャーナルより引用

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