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読者ほどには伸びないモバイル広告収入
伝統的な出版社や新聞社だけでなく、インターネット上で雑誌やニュースのコンテンツを提供するメディア企業も、モバイル端末のトラフィック急増をなかなか収益に結びつけられずにいる。スマートフォンやタブレット端末で情報を消費する傾向が強まるなか、メディアの成長への疑問が生じている。
米ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)から、オンラインで企業やテクノロジー関係の記事を提供するビジネス・インサイダーや情報サイトのアバウト・ドット・コムに至るまで、全てのニュース・情報サイトでは、モバイル端末による読者が急速に伸びている。調査会社のコムスコアの推計によると、モバイルでコンテンツを利用する時間は7月までの12カ月間で40%伸び、サービス全体の利用時間の55%を占めるまでになった。2年前の比率は42%だった。
問題は、多くのメディア企業にとってモバイル収入の伸びが全くそれに追いついていないことだ。つまり、業界で言うところの「モバイル・ギャップ」だ。
モバイル端末に掲載する広告の販売は難しいことが分かってきた。モバイルユーザーにしっかりと広告を見させるのは簡単ではない。「バナー広告」などの伝統的な広告形態の効果は極めて小さく、広告の効果について精緻な追跡をしたり、広告の的を絞ったりすることができない。こういった問題は、メディア企業のモバイル用サイトでもアプリ(応用ソフト)でも同様だ。
一方、大手インターネット企業である フェイスブック 、グーグル、ツイッターといった企業は、このような問題に直面することなく広告主が支払うモバイル広告費を吸い取っている。調査会社のイーマーケターによると、フェイスブックだけで、2014年の米国のモバイルディスプレー広告収入の37%を占めたという。
ニューヨーク・タイムズの最高収入責任者(CRO)を務めるメレディス・コピット・レビアン氏によると、同紙ではデジタルサービスへのアクセスの半数以上が今やスマホおよびタブレット端末から来ている。ただし、これらの端末が15年第2四半期のデジタル広告収入に占めた比率はわずか15%だった。
レビアン氏は「(モバイル収入は)間違いなく訪問者数に追いついていない」と述べる。
ニューズ・コープ傘下のダウ・ジョーンズ(WSJの発行元)の状況も似たようなものだ。ウォール・ストリート・ジャーナル・デジタル・ネットワーク(WSJ、マーケットウオッチ、バロンズとWSJマガジンを含む)へのユニーク訪問者の半数以上はデスクトップ以外の端末から来ているが、同ネットワークのデジタル広告収入のうちモバイルが占める比率は20%に満たない。関係者が明らかにした。
ダウ・ジョーンズはコメントを差し控えた。
経済誌「フォーブス」のCROを務めるマーク・ハワード氏によると、サイトへの訪問者の半数近くがデスクトップ以外から来ている。同社はモバイル広告をデスクトップ広告とほぼ同じ価格で販売できているが、スマホの画面は小さいため、デスクトップと同じ数の広告を表示させるのは難しい。
ハワード氏は「デスクトップは依然として、当社のインベントリー(広告枠在庫)の70%を創出している」と話す。
モバイル・ギャップの問題は、新聞など「伝統的な」メディア企業にとって喫緊の課題だ。これらの企業はデジタル収入を急速に伸ばし、印刷広告事業の急減分を相殺する必要があるからだ。
しかし、多くのデジタル専門のパブリッシャーもこの問題に直面している。IAC/インタラクティブコープ傘下のアバウト・ドット・コムのニール・ボーゲル最高経営責任者(CEO)によると、過去18カ月で改善してはいるものの、モバイル端末からの訪問1回は、デスクトップ端末からの訪問の2分の1から3分の2ほどの価値しかないという。
過去20年にわたるデスクトップ端末向けのインターネット広告ブームは、精緻な追跡とターゲットを絞り込むためのシステムに支えられてきた。これらのシステムは、スマホやタブレット端末ではデスクトップ端末ほどうまく機能しない。つまり、モバイル広告がビジネスに恩恵をもたらすと広告主を説得しにくいのだ。
例えば、ある消費者がネットで閲覧したが実際には買わなかった靴の広告を、小売店がその消費者のデスクトップパソコンに配信することは、最近ではよくあることだ。しかし、それをモバイル端末に対して行うのはずっと難しい。
雑誌「タイム」を発行するタイム社は、的を絞ることの難しさが、モバイル収入がトラフィックほど伸びていない理由の1つだと述べる。コムスコアによると、6月の同社のモバイル読者数が前年同月比46%増加したが、同社のグループ責任者を務めるアンディ・ブロー氏によれば、モバイル広告収入の伸びは「10%台」だったという。
同氏は「われわれは広告主が中価格帯の車に関心を持つ人と、高価格帯の車に関心を持つ人とを見分けるのを手助けできるようになる必要がある」と話す。
フェイスブック、グーグルやツイッターはこの分野にたけている。フェイスブックはユーザーについて、性別、年齢や興味など、大量のデータを持っているだけでなく、ユーザーがどのデスクトップ端末ないしモバイル端末を使っているかも知っている。フェイスブックのログインは事実上「クッキー」の代わりとなっている。クッキーは小さなファイルで、ウェブサイト運営者がデスクトップ上のユーザーの動きを追跡するのを可能にしてきた。
フォレスター・リサーチのアナリスト、ジェニファー・ワイズ氏は、「彼らはデバイスの違い、そしてチャネルの違いをまたぐ消費者データの山を使える状態にある」と述べる。
メディア企業にとっては、モバイル端末で男性といった幅広い層に的を絞ることさえ難しいが、フェイスブックではそれが簡単にできるだけでなく、それ以上のことも可能だ。
一部のメディア企業は新しい広告の形態や戦術を試している。ニューヨーク・タイムズは新しい広告商品のテストを開始する予定だ。それは1日を7つに分け、広告主が特定の「瞬間」を狙ってユーザーにメッセージを出せるようにするものだ。
コンテンツに紛れ込ませるネイティブ広告に力を入れているメディア企業もある。「企業ブランドを使ったコンテンツはモバイル端末でものすごい効果を発揮する」とビジネス・インサイダーのCROのピーター・スパンデ氏は語る。
フェイスブックと組むことで、広告収入を上げる目的を達成できると考えているメディアもいる。フェイスブックはモバイル読者を熟知しているからだ。
幅広い話題を取り上げるウェブサイトを運営する米バズフィード、英日刊紙デイリーメール、高級誌アトランティックやニューヨーク・タイムズは、フェイスブックに記事をそのまま掲載する「インスタント・アーティクルズ」プログラムに参加している。
だが、将来をフェイスブックに委ねることに懐疑的なメディアも多い。ウォール・ストリート・ジャーナルはこのプログラムへの参加を検討しているがまだ決断していない。
メディア各社は最終的にはモバイル端末の広告に関する技術的問題は解決できるとみている。
ニューヨーク・タイムズのレビアンCROは、「モバイルの収入をもっと急に増やしたいところではあるが、正しい方向には行っている」と述べた。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版より引用